うゐの奥山行(23)―ランドルクにて(前)2009/01/18 10:52

携帯型固定電話

12時30分、ジヌー(1780M)出発。モディ・コーラを渡って、しばらく下り、畑の中の道を上って、丘の上の村ランドルク(1565M)へ。14時50分、ランドルクのホテル・シェルパ着。ランドルクはモディ・コーラの渓谷に向かって開けた比較的大きな村で、ロッジも大きく、たくさんある。ここからは携帯電話も通じるというので、携帯を取り出して電源を入れてみるが、全然だめ。ふと見ると、ロッジの物干しロープに携帯電話が吊る下げられている。そこだけ電波が来ているのだそうだ。これでは携帯というより“固定”電話である。テジくんにビールを頼むと、エベレスト・ビールの大瓶を持ってきた。里が近くなって缶が瓶に変わったのだ。エベレスト・ビールのラベルは、エベレストに初登頂した(エドモンド・ヒラリーではなく)テンジン・ノルゲイ・シェルパが頂上に国旗をたてている有名な写真である(撮ったのは当然のことながらヒラリー)。2人のうちのどちらが真の初登頂者であったか、2人とも鬼籍に入った今となっては確かめるすべはないが、ネパール人の奥ゆかしさを考えると、最後の瞬間、テンジンはゲストであるヒラリーに1歩譲ったはずだと私は確信する。ビールを飲みながらスケッチしていると、先に着いて昼寝していた西洋人の青年2人(あとでフィンランド人とわかる)が起きてきた。彼らの連れているガイドが煙草をふかしながらビールを飲んでいるのを見て、テジくんが「煙草はガイドの仕事に悪いし、子供の頃、酔っ払ったお父さんがお母さんと喧嘩ばかりしていたので、私は飲みません」という。そんな健気な心がけの人に毎日ビールを注がせて悪かったわと(ちょっとだけ)反省する。

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