Go Go Everest ! (23)―ゴラクシェプへ2009/12/11 10:31

ゴラクシェプ遠景

12月11日6時40分起床。寒い。頭痛が治まっていて一安心。念のために葛根湯を飲んでおく。チャパティとジャム、ミントティーで朝食の後、8時少し前にゴラクシェプに向けて出発する。地面にこびりついた茶色く枯れた草をヤクが食べている。曇っているせいで薄暗く、景色がますます荒涼として見える。ゴラクシェプに着いたら、午後にカラ・パタールに登って夕焼けのエベレストを見る予定になっているのだが、ヌプツェの向こう側は雲に覆われていて何も見えない。10時5分、ゴラクシェプ(5140M)のブッダ・ロッジ着。たった7162歩なのに平地の2倍以上の時間がかかった。そのうえ風が強く、体温を奪われて、意外に疲れた。

Go Go Everest ! (24)―カラ・パタールへ2009/12/11 14:59

エベレストが顔を出す

11時30分にチョウメンと紅茶で昼食。ちょっと頭痛がする。食堂ではイギリス人のパーティが帰り支度をしていた。彼らは昨日着いたのだが、ずっと曇っていたためにエベレストを見ずに下山するのだそうだ。他に気分の悪くなったゲストが出て、ヘリコプターが呼ばれたとのこと。「保険に入ってきましたか?」とテジくんが冗談まじりに聞くので、「もちろん入ってきたよ」と答える。去年のABCトレックのときから山岳保険に入って来ているので、もしものことがあれば救援費用が出て、ヘリだって呼べるのだ。昼食の後、2階のガラス窓に囲まれた部屋で、深呼吸しながらヌプツェをスケッチしていると頭痛が治まってきた。ただ、ヌプツェの向こうに見えるはずのエベレストは雲に隠れたまま。カラ・パタールに登るのは明日の朝の方がいいのではないかとも思えてくる。ところが、しばらくすると次第に雲が薄くなり、エベレストの頂上がうっすら顔を出した。テジくんが呼びに来て、「そろそろ出発しましょう」という。夕暮れは5時なので、3時に出ればいいと言っていたのに、私のバテ具合を見て、少し早めに出ることにしたらしい。「大丈夫?」と聞くと、「大丈夫、見えます」と自信満々だ。14時40分、いよいよカラ・パタール(5550M)へ出発。この400Mの登りが最後の難所である。

Go Go Everest ! (25)―カラ・パタールにて2009/12/11 17:32

エベレストを背に記念写真

プモリの真下にあるカラ・パタールは、“黒い岩”という名の通り、てっぺんの黒い小高い山で、ゴラクシェプから頂に向かって白い道が通じている。ただし、下から見える頂がてっぺんではなく、本当のてっぺんはその裏のもっと高いところにある。登り始めてしばらくすると、風に雲が流され、空がどんどん晴れて、エベレストがくっきり見えるようになった。見えるうちにと、少し登っては写真を撮り、また少し登っては写真を撮りを繰り返す。テジくんも友達に借りてきたデジカメで盛んに写真を撮っている。風が強く、ダウンを着ていても、かなり寒いが、丘の上まで出ると日差しがあって暖かい。16時30分、カラ・パタールに到着。西側が深い崖になっていて、立つと風に吹き飛ばされそうになるので、最後は這って上がり(やった、55歳で5550Mの頂に座ったぞ!)、記念写真を撮ってもらったらすぐに風の来ないところまで降りた。見渡せば、真北にプモリ(7165M)、北東にチャンツェ(7553M)、東にエベレスト(8850M)、すぐ南隣にヌプツェ(7861M)、はるか南のアマダブラム(6856M)まで一望の下である。途中から一緒になったスイス人のトレッカーにカメラを渡し、テジくんと私の記念写真を撮ってもらう。カラ・パタールの上は寒くて30分くらいしか居られないというが、ふと気づくと皆下っていって、テジくんと二人きりになっていた。

Go Go Everest ! (26)―カラ・パタールから下る2009/12/11 18:26

夕日に染まるエベレスト

陽が傾いてきたので、「そろそろ降りよう」とテジくんを促すが、「もう少し居ましょう」という。確かに夕日で黄金色に染まるエベレストは、たとえようもなく美しい。ただ、あの頂を目指して何人もの登山家が命を落としたのだと思うと、凄絶な感じもする。さすがに薄暗くなってきたので、17時40分頃に下山開始。1時間近く長居したことになる。しばらくして、両手の感覚がなくなっているのに気づき、あわてて手袋の上からオーバーグローブをはめ、両手をポケットに突っ込んで暖めたり、こすり合わせたりする。やっと血行が戻り、手がジンジンしてきてホッとする。こんなところで凍傷になったら、いかにも間抜けだ。暗くなったのでヘッドランプを点けるが、老眼のせいか足元があまりよく見えない(実は電池がなくなりかけていた)。ここでも、夜目の利くテジくんの指示が頼りだ。辺りがとっぷりと暮れ、星が出てきた。満天の星空を眺めていると、「あれは何でしょう?」とテジくん。見るとエベレストの上に一際輝いている星がある。「金星じゃない?」、夕暮れ時に見える一番明るい星といえば、それしか思いつかないので、そう答えると、「UFOじゃないですか?」とテジくん。「まっさかー」。そのうち、光がまったく動かないのに気づき、諦め顔で、「やっぱりUFOじゃないですね」。その瞬間、エベレストの真上を流れ星が走った。UFOには驚いたが、流れ星が見られたのは、テジくんのおかげかもしれないと感謝。5000Mを超える高所、それも暗闇の中の下りは意外に時間がかかり、8時近くになってやっとロッジに戻る。寒さのせいで頭痛がぶり返し、吐き気もするので、夕食を食べずに寝る。