チョラパス越えて(18)-エベレストBC2011/01/15 11:15


10時10分、ロッジに戻る。実は下山の途中で、転んで左足首を捻ってしまった。一瞬、捻挫かと青くなったが、しばらく休んだら、また歩けるようになってホッとした。食堂で朝昼兼用の食事を済ませ、風邪薬を飲んでおく。咳と鼻水がなかなか治らず、ときどき足を止めて鼻をかまないと息が苦しくなるのだ。1時間ほど休憩した後、12時にエベレスト・ベースキャンプへ向かう。
エベレストBCへの道
エベレストBCとは、クンブー氷河の北端と、ウェスタン・クームの西端にあるクンブー・アイスフォールがぶつかる地点にあり、地図には5364Mと記されているが、氷河の上なので、シーズンごとに場所が少し移動する。ウェスタン・クーム東端の南がローツェ(8516M)、北がエベレスト(8850M)で、両山頂を結ぶ尾根の真ん中にサウス・コル(7925M)がある。ちなみにベースキャンプまでは誰でも行けるが、その先に行くにはネパール政府に登山料を支払わねばならない(料金はルートや人数によって異なるが、公募隊に参加すれば1人1万ドル程度)。
あそこがエベレストBCだ!

EBCへ向かって歩いていると、左足首の痛みに加え、これまでの疲労が重なって腿の筋肉が悲鳴をあげる。どの石も浮き石に見え、大丈夫と思って乗った石が動いて、ひやりとする。やっとクンブー氷河の縁に上がり、チャンツェを目標に歩いて行くと、出発から2時間ほどで氷河とアイスフォールがぶつかり、くの字に曲がっている場所が見えてくる。あの左端あたりがエベレストBCである。シーズン中はカラフルなテント村が出来るそうだが、今は数人の人影が見えるだけ。“EBC”と書いた看板が立っているというので、記念写真でも撮っているのだろう。あそこに行き着くには、今立っている縁を下って氷河を渡ればいいのだが、その後、再び氷河を渡り返して縁を登ることを考えると、それだけの気力と体力が残るかどうか自信がない。しかも、EBCに行っても景色がよくなるわけではなく、かえってエベレストが見えなくなってしまうのだ。「もういいよ。引き返そう」と私。「あと40分で着きますよ」とテジくん。だが、行きが40分なら帰りは1時間だ。ロッジに帰り着く前に暗くなってしまう。「もう足が動かない。暗くなる前に帰ろう」と言い、有無を言わさず、来た道を引き返し始める。歩き出して15分は、“今ならまだ間に合う。引き返してEBCへ行こう”という猛烈な後悔に襲われたが、再びモレーンの登りにかかると、足を前に出すのに必死で、そんな後悔など、どこかに消え去ってしまった。道すがら、午後の日差しで気温が上がり、ヌプツェの西壁を不気味な轟音をあげて落ちていく白煙を何度も目撃した(↓)。
雪崩多発地帯

16時、まだ日のあるうちにゴラクシェプに戻り、ビタミン剤を飲んで、左足首に湿布して寝た。
<Trekking in the Nepal Himalaya>は、“高度と疲労で、多くのトレッカーは、カラ・パタールかEBCか、どちらか一方にしか行くことができない。両方へ行きたいなら、ゴラクシェプに着いた日の午後EBCへ行き、翌朝カラ・パタールへ登る”よう勧めている。カラ・パタールは往復4時間、EBCは往復6時間の設定で、同じ日に両方へ行こうとした私は、ちょっと無謀だったかもしれない。