スリーパスに挑戦―Day4 (Namche - Thame)2015/01/14 07:12

12月9日6時10分起床。体調がいまいちなせいで、夜半いろいろなことを考えた。本当にレンジョ・ラを越えられるだろうかという不安もある。朝の天気はあまりよくない。
7時15分、チベッタン・ブレッド&蜂蜜、ブラック・ティーで朝食。チベッタン・ブレッドが冷たくてがっかり。
8時10分出発。今回は元々の予定通り、スリーパスを西から越えることにした。西ルートは、ルンデ(4350m)からレンジョ・ラ(5345m)まで約1000m上げ、ゴーキョ(4750m)まで下るルートを1日で歩き通すことになるので、ロンリープラネットには“高山病になりやすく勧めない”とある。が、東からだとディンボチェまでは今まで何度も歩いたエベレスト街道をまた歩くことになり、代わり映えしないし、一番難しいコンマ・ラ(5535m)から入るのも気が重い。それに前回失敗したので、気分を新たにするためにも当初の予定通りに歩こうと思ったのだ。なので、今日はタメまで(ロンリープラネットの設定では3、4時間)歩くだけでいい。
行く手(タメ)の方を見る
谷間に沿って馬蹄形に作られたナムチェの村を出て、峠を回ると、行く手にボテ・コシ川の谷が広がっている(↑)。道は昔からチベットとの交易に使われていたので、緩やかで歩きやすい。空はすっかり晴れ、左(南)側にコンデ・リ(↓)を見ながら針葉樹の森の中を歩いていくので、木漏れ日が気持ちよく、次第に気分が前向きになっていく。
コンデ・リを横目で見ながら歩く
途中でガイドを連れた中国人のグループとすれ違う。服装と装備から見て、レンジョ・ラを越えてきたのではなく、タメあたりまでショート・トレッキングした人達らしい。
峠のストゥーパ
ピュルテのストゥーパで小休止。今回は気をつけて行動食をとることにし、キャラメルを出してラジューくんとお兄さんのニルグマールさんに分け、1個口に入れる。
タメの村
まだ本調子ではなく、ボテ・コシを渡ってからの登りに手を焼くも(学校帰りの子供たちに追い抜かれた)、11時40分にタメのサンシャイン・ロッジ着。ナムチェから3時間30分は、まずまずかも。
カンテガ(左)とタムセルク
12時30分にヴェジ・フライドライスとブラック・ティーで昼食。タメは谷間のせいか、風が強い。ロッジの庭で、汗で湿った衣類と靴を干し、カンテガとタムセルク(↑)をスケッチしていると、ルンデから下ってきたという西洋人のおじさんトレッカーが現れ、「このロッジ、開いてる?」と聞く。こうして、おじさんが加わり、ロッジのゲストが(私を含め)2人となる。

スリーパスに挑戦―Day 5 (Thame - Lumde)2015/01/14 08:41

12月10日6時15分起床。雲ひとつない快晴。今日はタメ(3820m)からルンデ(4370m)まで約500mの登り。ロンリープラネットには東ルートの設定しか載ってないが、それだと下りで2、3時間になっているので、登りだと4時間強だろう。
7時30分、オムレツ・トーストとブラック・ティーで朝食。ラジューくんとお兄さんが、こんな奥地なのにタメの物価はルクラと同じだと言う。ということはルクラは、かなり観光地値段なのだ。
へー。
タメのサンシャイン・ロッジ
8時出発。出てすぐ丘を越えると、行く手の道筋が見えてくる。地形がマッチェルモからゴーキョとか、アンナプルナ・サーキットのトロン・フェディへ向かう谷道に似ている(↓)。
タメの丘から行く手を見る
丘を降りると、開けた台地に大きなストゥーパが立っている。ここから北へ、ナンパ・ラを越えてチベットへ抜ける道が、古くから塩と穀物の交易で栄えた街道だ。が、現在外国人はマルルンから先には入れない。
タメのストゥーパ
途中で、前日レンジョ・ラを越えてルンデに泊まったらしいトレッカー十数人とすれ違う。こちらからルンデに向かうトレッカーは私達の他にいないので、やっぱり西ルートは人気がないのだ。ところが、出発から2時間ほどしたときに、少し前にジャケットを脱ぐために小休止した場所にショルダーバッグを置き忘れたことに気づく。ラジューくんが取りに行ってくれている間、どうせ大したものは入ってなかったから、なくなっても仕方がないと諦め半分だったが、しばらくしてパスポートを入れていたことを思い出して焦る。ラジューくんがなかなか戻って来ないので、いよいよ諦めてカトマンドゥに戻ったら大使館で新しく作ってもらおう、たしかトランクに予備の証明写真を入れてあったはず…と算段。小1時間ほどすると、目のいいニルグマールさんが「戻ってきたよ」と教えてくれた。「バッグ持ってる?」と聞くと、頷いてくれたのでホッとする。得意顔のラジューくんからバッグを受け取ると、今後、絶対に忘れないよう、ザックの奥にしまい込んだ。
ルンデのロッジが見えてくる
というわけで、40分のロスと私の歩くのが遅いのとで、11時30分にマルルン(4210m)に着いたところでラジューくんが昼食と決める。ホットレモン(胃の調子を悪くしたので、今回はなるべくホット・レモンを飲むことにした)とヴェジ・フライドライスを食べる。
12時30分、マルルンを出発。13時30分ルンデのコンデ・ヴュー・ロッジ着。ホットレモン2杯。
レンジョ・ラから降りて来た西洋人の女性2人が加わる。他に開いているロッジはないようだ。寒いので17時頃からダイニング・ルームのストーブにあたっていると、ロッジをきりもりしているお兄さんが、三味線の棹を長くしたような、バンジョーのような楽器を弾いてくれ、ちょっとした演奏会になる。18時、ポテトフライ&エッグ、ガーリックスープで夕食。明日は、いよいよレンジョ・ラ越えだ。

スリーパス・ルートに挑戦―Day6 (Lumde - Renjo La - Gokyo)2015/01/14 10:03

12月11日4時起床。いよいよ1000mの登りだ。今日のルートには途中にロッジがないので、お弁当を作ってもらう。お弁当といっても中身はゆで卵とビスケットだけ。
5時30分出発。暗いのでヘッドランプをつけ、最初はヤクの放牧地の横を登っていく。
レンジョ・ラ越えに出発
しばらくすると夜が明け、あたりが明るくなってくる。放牧地を過ぎると風景が俄然荒涼としてくる(↓)。前を行くのはニルグマールさん。ラジューくんは私が足を滑らさないよう、後ろで見張っている。
前を行くニルグマールさんの背中
今日のルートには途中にいくつか湖がある。出発前に地図で見て、穏やかで美しい風景を想像していたが、来てみると、私達3人以外には人影もなく(本当に一人も遭わなかった)、日が射さないせいか、荒々しく、厳しい。
レンジョ・ラへの道
途中までの登りはさほど急ではないが(↑)、さすがに5000mを越えると、息が苦しく、スピードが出ないどころか、足を交互に出すのがやっとになる。
レンジョ・ラへの道筋を振り返る
東側が峠なので西ルートには、なかなか日が射さない(当たり前だが)。なので高度が上がると、道に降った雪が半分凍結していて滑りやすく、峠に近くなるにつれ、次第に登りが急になって、ますます歩く速度が落ちる。
あのギザギザがレンジョ・ラだ
行く手にギザギザのある壁が立ちふさがる(↑)。レンジョ・ラはあんなギザギザの1つである。いつものことだが、あそこまで行くのかと思うと、本当にがっかりする。さらに近づくと、レンジョ・ラの下まで、急な階段状の石段が続いていた。
レンジョ・ラ
10時30分、レンジョ・ラ着。峠から見た素晴らしい景色(↑)。正面にエベレストとローツェ、右手奥にマカルーと、8000m峰3座が一望の下だ。エベレストの下の青い水たまりがドゥドゥ・ポカリ(今はゴーキョ・ショと言うらしい)で、その縁が今日の目的地ゴーキョだ。峠でラジューくんに記念写真を撮ってもらい、昼食のゆで卵とビスケットを食べ、11時10分、出発。ところがレンジョ・ラからの下りは予想以上に急なうえ、雪で凍結している。去年滑って不評だったブーツは買い換えたが、それでも滑るので、軽アイゼンを履いてみたが、雪はそれほど厚くなく、岩でアイゼンの歯が滑るので、すぐ脱いでしまった。しばらくすると急な下りが終わり、雪は消えるが、さらに氷河跡のモレーンが続く。下りは楽だろうと思ったが、意外に手強く、土の道に出るまでにくたくたになった。ガイドブックが西ルートを勧めないのは正解だなと心底思った。
ウェルカム・ドリンク(ホット・マンゴー・ジュース)
14時15分、ゴーキョのナマステ・ロッジ着。ウェルカム・ドリンクを出してくれたので、飲んでみたらホット・マンゴージュースだった(マンゴージュースをホットで飲むのは初めてだったが、とっても美味しく、以後ホット・ジュースにはまってしまった)。今日のレンジョ・ラ越えは休憩含め8時間45分。ロンリープラネットの設定だと逆ルートで7~8時間(休憩含まず)なので、ほぼ普通のペースだろう。今回は歩数計を持ってこなくて計れなかったが、今日の歩数は記録になったかもしれない。

スリーパスに挑戦―Day7 (Gokyo)2015/01/14 13:09

12月12日6時に目覚める。昨日が峠越えだったので今日は休養日だ。が、昨夜どこへ散歩に行くかラジューくんと話し合い、ラジューくんの勧めるゴーキョ・リは却下し(既にチョラ・パス越えのときにテジくんと行ったので)、まだ行ったことのない“聖なる湖”ルートを選択。理由は単純で、これだと行程は長いが(ロンリープラネットの設定でゴーキョ・リは往復4時間、聖なる湖は5時間)、200mあまり登ればすむが、ゴーキョ・リだと700m近く登らねばならないからだ。
ゴーキョから見たレンジョ・ラ
7時にポテト・オムレツとミルクティーの朝食を食べ、8時に出発。最初はチョー・オユーを目標にゴジュンパ氷河を遡っていく(↓)
チョー・オユー(8201m)
ところが、歩きだしてすぐ、苦手なモレーンの踏み跡をたどって行くので、思ったよりも楽ではないことに気づく。氷河の上を風が吹き抜けていくので、太陽が照っているのに意外に寒い。
タナク・ショ
それでも、最初のトナク・ショ(↑)を過ぎた頃から、ようやく歩きやすくなってきた。
ガウナラ氷河から見たエベレスト
出発から3時間かかって目的地のゴジュンパ・ショに着く。東側からガウナラ氷河が合流するので、ここから氷河越しにエベレストが眺められるのだ(↑)
第五の湖ことゴジュンパ・ショ
このままゴジュンパ氷河をたどっていくと、まだ先にギャジュンパ・ショという湖があるが、そこまで行くにはキャンプの用意が必要になる。聖なる湖を眺めながら昼食(相変わらずのゆで卵とビスケット)を食べ、風があって寒いので、写真を撮ったらすぐ引き返した。下るうちに、今回初めて左足が痛くなってきた。
14時、ロッジ着。往復6時間もかかり、休養日なのにすっかり疲れてしまった。顔が日に焼けたので、パックをしようか悩むが、パックをすると顔が寒いし、面倒なのでやめておく。

スリーパスに挑戦―Day 8 (Gokyo - Tagnag)2015/01/14 14:07

12月13日6時起床。荷物を作り、7時30分に朝食。昨夜疲れて食欲がなかったので、朝も軽めにポテトスープとブラック・ティーだけにする。
8時30分出発。今日はゴジュンパ氷河を渡ってタンナに下るだけ。氷河は毎年動くので、どこを歩くかをシーズン始めに決め、ケルンが作られる。2010年のチョラ・パス越えのときはゴーキョから少し下ってから越えたが、今回はロッジを出るとすぐに氷河の縁を登り、内側に入る。氷河上のところどころで氷が顔を出し、クレバスがあって危ないので慎重に進まねばならない。石がゴロゴロする小山を幾つも越えていく、私の苦手なモレーン歩きだ。ふと気づくと、昨日快晴だった空は灰色で、背後に見えるはずのチョー・オユーがすっかり雲に隠れている。
ゴジュンパ氷河を渡る
反対側に着いて縁を登ると、前日チョラ・パスを越えてきたグループとすれ違い、「Enjoy Trekking !」と声をかけられる。確かにその通りだなと思い、以後、私も同じ言葉をかけることにする。
10時20分、タンナのクンビラ・ホテル着。2010年に泊まったのと同じロッジのようで、見覚えがある。そのとき工事中だった部分はすっかり出来上がっている。4年経ったから当たり前だが。
タンナのロッジが見えた
12時、ヴェジ・フライドライスとホットレモンで昼食。天気が悪いので、明日の朝、天気を見てチョラ・パスに行こうということになる。今朝、チョラ・パスに向かった人が天気が悪くて引き返してきたとも聞く。チョラが通れなければ、ポルツェまで下ってコンマ・ラに回ることになるのだろうか。
ロッジには私の他に単独の男性トレッカーが2人いた。「あの人は日本人ですよ」とラジューくんの言う、長い髪を頭の上で結って、ずっとジャグリングの練習をしている人は、諸星大二郎の<諸怪志異>に出て来そうな雰囲気だ。好奇心が湧き、ストーブにあたっているときに思いきって話しかけてみたら、横浜から来たという日本人だった。ラジューくん「正解」。もう1人は雲南から来たという中国人の青年で、この2人とは意外に長いお付き合いになった。