アンナプルナ1周― Day8 ハイ・キャンプ ― 2012/01/08 11:44
12月15日。6時に腕時計のアラームが鳴る前に目が覚める。頭痛は消えたが、高度が上がったせいか寒いせいか、血圧が高い。

支度を済ませ、ロッジの台所で竈の火にあたらせてもらう。昨日は気づかなかったが、奥さんがすごい美人でびっくり。7時にチベッタン・ブレッドとジャムで朝食。8時に出発し、奥のロッジを通るときに、ここからチュル・ウェストに登るフランス人グループに“Bonne continuation !”(引き続き頑張ってね)と別れの挨拶。

昨日と同じ渓谷の道を1時間あまり歩いてデウラリの茶店に着き、小休止(ロンリー・プラネットに“茶店の夫婦は喧嘩っぱやい”と注意があるが、ごく普通の人だった)。私がもの欲しそうな顔をしていたようで、テジくんがリンゴをおごってくれる。

デウラリから先は、さらに道が細く、すべりやすくなり、土砂崩れの標識が出ているところもある。

10時、トロン・フェディ(4540m)着。ロンリー・プラネットは、ハイ・キャンプは寒いし、高山病の危険があるので、ここで1泊して、トロン・パス越えをするよう勧めているが、ここからだと登りが1000mもあり、今日少しでも高度を稼いでおいた方が楽、というのがテジくん、アムリットくんの意見だ。

今回、ポーターを引き受けてくれたアムリットくんはマガール族で、おじさんがエベレスト登山隊に参加したこともある山の一家だ。話を聞くと、トロン・パスだけでなく、あちこちよく歩いている。英語が少し話せるし、体は強いし、そのうちいいガイドになる、とテジくんは言う。顔が長めで、ちょっとヴァンサン・カッセルに似ている。最初は隠していたが、テジくんと違って煙草もお酒もやる“大人”だが、実は童顔のテジくんより1歳下である。

さて、トロン・フェディからいよいよ峠越えに入る。道はトゥクラ・パスに似たモレーンの険しい登りとなり、最初にカラ・パタールに行ったときに苦労したことを思い出す。しかも、高度が4000mを越え、トレーニング不足が確実に足に現れてきた。私の遅いのを見かねてテジくんがザックを持ってくれる。

登り続けること1時間で、やっとモレーンの上に出て、ハイ・キャンプのロッジが見えてくる。ところが高度が5000m近くなると、ロッジ前の坂を登るのにも息が切れ、我ながら情けなく思う。

11時25分、トロン・ハイ・キャンプ・ビュー・ホテル着。12時半にツナ・サインドイッチとトマト・スープで昼食。日当たりのいい食堂で休憩していると、自転車でトロン・パスを越えてきた西洋人が現れ、お湯を貰ってカップの辛ラーメンを食べ始めた。逆側から越えたということは、高度差1600mを自転車で登りきったということだ。考えてみたら、ムクティナート側の方が傾斜がゆるやかだから、自転車で登るのに適しているかもしれないが、それにしても凄い。ロンリー・プラネットに、車道の整備で、これからアンナプルナ・サーキットにはバイカ―が増える、というようなことが書いてあったが、まさに、時代の変化を目のあたりにした気がした。

18時にポテト・スープとスプリング・ロールで夕食。食堂には後から着いたフランス人とイスラエル人の4人グループがいて、リカール(アニス酒)の小瓶を出して皆で飲んでいる。小耳にはさんだところでは、彼らは明朝、明るくなってからトロン・パスを越えるのだそう。ふと見ると、1人がロンリー・プラネットの該当ページを千切って持っていて、参考にしている(当然、明るくなってから歩く方を推奨)。私達は、日が出ると風が強くなる、というアムリットくんの意見で、まだ暗いうちに出発することになっている。テジくんから“明日は3時30分起床です”と、きつく言われているので、早めに床に就く。