アンナプルナ1周― Day6 ブラカ(ミラレパ洞窟) ― 2012/01/07 14:59
12月13日6時起床。お灸が効いたのか、マメの水は引いていたが、左足首の捻挫がまた痛む。大丈夫かなあ。

谷の日陰側のフムデは、さすがに寒く、そこら中に霜が降りている。顔を洗ってから台所に行き、竈にあたらせてもらいつつ、奥さんがチベッタン・ブレッドを揚げるのを見学。揚げたてのブレッド(給食の揚げパンそっくり)にジャムをつけて食べる。

8時に出発。すぐ隣がフムデの飛行場(ロッジの裏が滑走路)だ。行く手の山がアンナプルナⅢに変わる。


1時間ほどでアンナプルナⅢの下の、山の中腹に白いチョルテン(塔)が見えてくる。あそこがミラレパ洞窟らしい。あんなところまで登るのかと一瞬気持ちが萎える(実は白いチョルテンはまだ中間地点で、洞窟はずっと上の、山の頂上にあった)。

9時30分、ブラカのホテル・アイスレーク着。部屋に荷物を置き、ロンリー・プラネットのガイドブックを読み直すと、ミラレパ洞窟は4320mでブラカと高度差800mもあり、往復4、5時間はかかると書いてある。地図で見ると近いので、勝手に3時間くらいで往復できると思い込んでいたのだ(間抜けめ)、がっくり。今の足の状態では登りに3時間はたっぷりかかるだろう。逡巡していると、テジくんに“本当に行きますか?”と念を押され、やけになって“行く”と答える。10時30分にダルバートで腹ごしらえ。ロッジのおじさんが出してくれた菜っ葉の漬け物が、ほどよく発酵し、好物のすぐきのような味になっていて美味しかった。

11時、念のためにヘッドランプを持ってミラレパ洞窟へ出発。橋を南側に渡り、放牧場を抜けると山のとりつきに着き、そこから急な登りが始まる。足下は乾いた砂で滑りやすく、切り立った崖の上を通ったりするので、とっても怖く、早くも後悔が頭をよぎる。

約1時間で、山の中腹に見えた白いチョルテンに着き、ぬか喜び。ここでまだ半分だった。

さらに登り続け、50分で小さなゴンパに着く。ここに安置されているミラレパ像は、ロンリー・プラネットによれば2004年にヘリコプターで空から運ばれたもので、向かって左に、猟師のケラ・ゴンポ・ドルジェと犬、右に鹿の像がある。伝説によれば、ミラレパ(1052-1135)は、鹿を追って洞窟に迷い込んできた猟師を諭して殺生をやめさせ、弟子にしたという。

実はゴンパがあるのは4000mあたりで、洞窟まではまだ45分の登りが残っている。ところが、7月の祭りの頃には巡礼者で賑わうとはいえ、今は誰もおらず、道がわからない。ここまでですっかり登る気をなくした私は、後はゴンパの裏にあるというミラレパの仏足石さえ見ればいいや、という投げやりな気分に。

しばらくして、道を探しに行ったテジくんとアムリットくんが戻ってきて、仏足石を見つけたという。

案内されて、崖に穿たれた小道(↑)をぐるっと回り、道の大半を塞いでいる巨大なつららを抱くようにして越えると、カターが巻かれた石造りの白い祠があり、中に足跡らしいものが刻まれた石が祀ってあった。ふーん、これがミラレパの足形か。ずいぶん親指の長い人だったんだなー。


さらに奥の方へ登っていくと、崖の天井に、なにやら曲がった木の棒が刺さっているのが見える。テジくんは、“これが重力に逆らって中空に止まった猟師の弓ですよ”と言う。“ウッソー、岩に刺さってるとしか見えないじゃん”と私。私達では、らちがあかないので、写真を撮って、ホテル・アイスレークのおじさんに見せて確かめることになる。

帰りは、もう登らなくていいので俄然元気になり、途中、白いチョルテンで休憩、テジくんにダル(豆)のスナック(カレー味)を貰って食べたりして、15時35分、無事帰着。洞窟まで行かなかったおかげで、まだ日のあるうちに帰れてよかった。
さっそく、おじさんに写真を見せると、なんと、あの木の棒が、霊験あらたかな“中空に止まった弓”であるとわかる。ウッソー。
さっそく、おじさんに写真を見せると、なんと、あの木の棒が、霊験あらたかな“中空に止まった弓”であるとわかる。ウッソー。

18時にポテト・スープとベジ・フライド・ヌードル(チョウメン)で夕食。19時40分、洞窟にはたどり着けなかったものの、行ってよかった、楽しかったと満足して寝る。